「今日は甥っ子に会いたいなぁ」とか「お母さんのつくったスパゲティが食べたいなぁ」とか
そういう願いが叶えられる世界で生きていることがすごい奇跡だと思える。
年を取っていくたびに、きっと一つずつ叶えられなくなる夢。
「お父さんに会いたいなぁ」が叶えられなくなって、初めて気が付いた、そういう奇跡。
愛する人たちが同じ世界で生きてるって、素晴らしいことなんだなって思う。
平和な心でいられる距離感で、自立して生きていく。
会わなくても同じ世界にいるっていうことが、私を支えている。
普段は意識しないけれど、そういう存在が酸素みたいに当たり前にいて
自分が保ててるってことを今は知ってる。
昔の写真を見て、まだお父さんが生きてて、家族が家族らしく回ってるときの
あの幸福な空気が写真にしっかり収められていて、
「ああ、あの時は幸せだったなぁ」って思う。
幸せって、いつの間にか過ぎ去っていく。
物質だけが取り残されて、その残骸とともに小さく時を重ねる母を見る。
なんて言ったら怒られるだろうか。
もうこの世にいない祖父母の荷物も、収納部屋に入れたままで
いつまでも片付かない、そういうたくさんの、向き合わないものには蓋をして目を背けて
きっと私たちが片づけることになるのだろう。
そして母はずっと現実の中から綺麗な幻を目を凝らして見つめて、そうして生きていくのだろう。

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